★チェ・39歳別れの手紙

公開初日のレイトショーへ行ってきましたが、見てから1週間も経ってしまいました。少しきわどい話から始めますが、悪意は全くありません。

なぜキューバのような国に興味があるかということ、これは自分で物事を考えたりすることが出来るようになったからです。特に政治思想も宗教も信条も持ち合わせていませんとお断りしつつ、きっかけとなったのは濃いものでした。

小学校時代をまるまる日教組の影響が大きい大阪で過ごした私は、3・4年生の頃の、バリバリ日教組的な担任の授業にかなり違和感を持ってました。他の教科の授業を潰してまで同和教育ばかりやっていた。詳しい内容は避けますが、私の年齢を知っている人はその時代にあの組合が何をしていたかは、調べればすぐ分かります。あるクラスメートがその渦中に放り込まれたのですが、大人になりうちの母親や5・6年の時の別の担任の先生と対等に話が出来る年になり、自分の持っていた違和感は自分だけではなかったという事を知りました。
情報過多な今の時代になってわかることは、あの先生のいいように教育を受けてたんだなーと。今頃きっと出世なさっているでしょうね(冷笑)←本当に嫌いでした。 お陰で自分で情報を得ると言う術も覚えられたのですからありがたいものです。
京都に転校したらそういう授業の進め方って無かったもん、全然。大阪で少なくない人がそういう教育を押し付けたせいで、はっきりとした嫌悪感を持つ人が多いのは、やはり教育の影響は大きいはずです。そして、そういう事をきっかけに疑問に思う事を徹底的に調べ上げるという術を覚えたことが、キューバ革命を肯定的に見、そしてもっと知りたいと思った理由の一つにもなった。

前置きが長くなりました。
超大国アメリカを肯定的にとらえ、自国の自虐史を徹底的に叩き込まれるような授業を受けてきた私たち世代。もちろん、アメリカにもたくさんいいところはあります。アメリカのバンドであるnine inch nailsを好きになって、アメリカの糞っぷり(下品ですみません)を知るという思わぬ副産物もあったりして、学校で知る事だけじゃないことも考えたり調べたり出来る機会に恵まれている情報化社会だし、資本主義・自由経済の国で生まれ育ったからこそのいい事もたくさん経験している。

経済の崩壊&グローバルな世界と言う視点で見ると、世界最強の根拠など既に無くなりかけているように見えるアメリカですが、グアンタナモ米軍基地こそ閉鎖すると言いましたが、やっぱりパレスチナ紛争についてはイスラエルを指示するという、オバマ大統領のがっかりっぷり。アメリカの大統領は一度ガザへ、イスラエルに内緒でこっそりと見に行ってみるべきだ。

そういうアメリカを見ていると、ゲリラ戦とはいえ、キューバ革命というものはかなり純粋なものだったと思えるのです。今のキューバ情勢は勉強不足でわかりません。貧困が蔓延しているという話も聞くし、現代とキューバ革命時では状況も全く違うでしょう。でもアメリカに住むのとキューバに住むの、どっちがいい?と聞かれたら「キューバ」と即答してしまうんじゃないかと。
それは、フィデル・カストロとエルネスト・ゲバラ(チェ)の描く理想郷が、あまりにも純粋だからで、ご近所の国の顔色をうかがっているばかりの国に自分がいるからかもしれないけれど、引き立って見える。世界中の経済が足下からぐらついているこんな時代だからかもしれない。

さて、映画はタイトルの通り、チェがフィデルに宛てたかの有名な手紙を、フィデル自身がキューバ国民に向けて読み上げるところから始まり、ゲリラ戦はやはり29歳と同じく淡々と進みます。家族との別れの描写さえ、これはボリビアへの入国という場面が必要なシーンだったのからかともと思うほど、淡々と描かれている。
チェの冷静さは相変わらずで、その中に秘められた、南米をアメリカからの詐取を解放するということにかける熱い思いというのは、淡々としていても充分に伝わってくる。
一部(28歳)と違って、39歳はもちろん見る前からほとんどの人は結果を知っているわけで、終わりが近づいているという全体的な暗さ、キューバ革命で、キューバ人を次々に味方につけたのとは対照的に、ボリビア人の心を掴みつつも、味方になってもらえず、キューバ革命と違って内外から「外国人」扱いを受けゲリラ部隊を統率しにくい、そしてアメリカとソ連の動向がこんなところでも絡んでくるという、チェにとってはとにかく苦しい場面ばかりが次々と襲ってくる。ソダーバーグ自身が意識して描いたと思うのですが、全体的に色味も冷たく、とにかく重いし、暗い。

チェやカストロがやったことが、別に社会主義革命ではないのと同じで、私を含めこの映画を見に行く人の中に社会主義を希望して見に行っている人なんてそういないだろう。でも、未曾有の世界同時経済危機の最中に、キューバ革命50周年を迎えこの映画を見るというのは、自分が何を思って生きて行くのかを考えるのにあたってとても有意義だった気がする。チェがゲリラ戦の最中も、国民に読み書きを教え、病気を診ていた、これこそが無償の愛というもので、今求められているのかもしれない(お金ではない愛、ということです)。

ここで、これを書きながら資料を漁っていて、少なからず自分が感じていた事に近く、面白い意見を見つけたので引用します。

拝金主義の成れの果て
(スティーブン・ソダーバーグ)

8年前から構想が持ち込まれていたとは全く知りませんでしたが、確かに公開がたまたま今に至ったことの重要性は大きいし、そして次の龍さんのレビューはソダーバーグの言う拝金主義というものの、具体的な説明になる文章だと思う。

08年9月のいわゆるリーマン・ショックで始まった世界的経済危機だが、循環的なものではなく、歴史の転換点だとわたしは考えている。金銭的利益だけを優先する企業戦略が破綻したと見るべきで、求められているのは景気回復などではなく、価値の転換であると思う。チェ・ゲバラが、生涯を賭して求めたのは、まさに金銭的利益以外の価値だった。(後略)
(村上龍)

この映画にあって、子供達と笑顔でカメラで遊んでいるデルトロの演じるゲバラ、最後の一介の兵士とのやりとりは、この映画で一番チェの魅力を感じるシーンだった。前者は、散々冷静にゲリラのおきてを掲げてゲリラ部隊を統率する人間と思わせて、不意に出てきたほのぼのシーン。そして後者は、敵兵をもぐらつかせる革命家としての男前っぷり。ベニチオ・デル・トロの演技には拍手をしたい。
男泣き?もちろんしましたよ。

(かなり重要なシーンも入っているけど映画には無いとんでもないシーンも入っています。ネタバレいやーんな人は要注意)

ヒーローになるつもりもないしもちろんなれないけれども、28歳と39歳の間を生きている私は、毎日何を思って生きていくべきなんだろうか。こんな熱い映画を見ても全くわからない。格好良く生きたいなんて中途半端な気持ちで、革命か死かという極端な信念を持つ事は、誰にとっても絶対にありえない。

ただ、少しは自分の中にある確たる信念、チェのやったことに比べれば屁のようなものだけど、それだけは大事にして生きていきたいと思います。

by trenco | 1.31.2009 | Category: 映画 | Tags:
★チェ・28歳の革命
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